
奈良県郡山市矢田町2017.12

横田監督が大学3回生のときに初めて撮った映画『その夏の、どん(1998年)』。この映画の中に不思議な風景が登場します。田んぼの真ん中にぽつんと取り残されたような丘。主人公はこの丘の上に立ち、田んぼに飛来する鳥を大声で追い払いながらひと夏を過ごします。
この不思議な丘は今でも残っているのでしょうか。監督に同行し、当時のロケ地を訪ねてみました。
奈良県大和郡山市矢田町。県立民族博物館からほど近い場所にその丘は今も残されていました。ただ随分と様変わりしています。かつて田んぼだった場所には土が盛られているのに、丘の部分だけが盛り土されることなく、周りが高くなったぶん窪地になって、そこから頭を出している状態です。

本当にこれがあの丘?と疑問に思ってしまうほどの変貌ぶり。しかし当時『その夏の、どん』を撮るため2年がかりでこの場所に通いつめた監督によれば、間違いないとのこと。


現在この場所を管理されている「咲かす農園」さん。取材の日は真冬でしたが、きっと春には色々な植物が花を咲かせたり実をつけたりするのでしょう。この場所を管理をされているおじさんにお話をお聞きすることができました。(「恥ずかしい」とのことでお写真を掲載できないのが残念です)

おじさんによれば、この丘の部分だけが所有者不明の土地であるとのこと。周囲360°どこからも公道に出られる場所はなく、まさに周りから取り残されるような状態でそこだけが昔から手付かずになっているそうなのです。現在も丘の周囲にはロープが張られ、中には立ち入れないようになっています。おそらく監督が映画を撮った29年前も、すでにこの丘は誰のものでもなく、草を刈る人もなく、荒れ果てて田んぼの真ん中に立っていたのではないかと推測されます。しかしなぜこの丘が手付かずになっているのか、明確な理由はわからないそうです。

さらにおじさんによれば、この丘がある矢田町は古代神話と関わりの深い土地で、神様が放った矢が落ちた場所がまさにこの丘である、という説を根強く唱える方もおられるそう(矢が落ちた場所に塚が残されている場所は他にあります)。
「矢田」という土地の名前も、この伝説から名付けられているのでしょう。ちなみに監督はこの伝説のことは知らなかったそうで、もし当時これらの経緯を知っていたら、この丘に登って勝手に映画を撮ることはできなかったかもしれませんね。怖いものなしの青春時代だったからこそ撮れた作品なのかもしれないと思いました。若いって素晴らしい。

思い出の丘をバックに横田監督の記念撮影。
『その夏の、どん』には、他にも印象的な風景がいくつか登場します。また別のロケ地探訪も乞うご期待です。