WORKS

1988その夏の、どん

STORY

青々と稲が茂る夏の田園風景。風景の真ん中に小さな丘がある。丘の上には詰襟姿の「僕」が立っている。「どん!」「どん!」と繰り返し叫んでいる。「僕」は田に飛来する鳥を大声を出して追い払おうとしているのだ。祖父より頼まれたれっきとした仕事である。「僕」は子供にからかわれたりしながらも仕事を続けて行く。村祭りの夜は若者が田にいたずらをしないか見張り番をすることも。 そんなある日「僕」は祖父の死に向き合うことになり。

奔放な詩的イメージが連鎖して行く処女作。田の真ん中にこんもりと盛られた丘。身の丈を越すススキ畑。荒野のような造成地に立つ電柱群。監督が日常生活で接した不思議な風景が物語の起点となっている。8ミリフィルムの質感が懐かしさを誘う。

Sono natsu no don
There is a small green hill in the center of a rural landscape in summer, which is overgrown with lush rice. ‘A boy’ wearing a school uniform with a standup color, is standing on the hill. He cries out “don” again and again, and tries to turn the birds that fly to his rice paddy away. This is a respected duty for him inherited from his grandfather. Even though sometimes children make fun of him, he continues his job every day. At night of a village festival, he looks out for the young who might be up to mischief on the hill. One day he faced the death of his grandfather...
The first film Yokota directed describes a series of unrestrained poetic images; a small hill in the rice paddy; a field of Japanese pampas grass which is taller than people; a cluster of electric light poles standing in a development area like wasteland. This story is based on a mysterious landscape that Yokota found in his daily life. The texture of 8 mm film makes us feel nostalgia for the good old days.

8ミリ / 4:3 / 30 minutes

STAFF

脚本・撮影・編集 /
横田丈実
出演 /
上條正章・内藤和也・西川圭祐
協力 /
龍谷大学映画研究部

DIRECTOR'S NOTE DIRECTOR'S NOTE

龍谷大学在学中に撮った作品です。映画研究部に在籍していたのですが、3回生になり、そろそろきちんとした作品を撮らねばと着手しました。

当時通学に利用していたのは近鉄電車。大和郡山駅より乗り、京都駅で下車していました。うちの寺から大和郡山駅までは原付にて移動。その途中に不思議な風景があったんです。広い田んぼの真ん中に、ぽつんと立つ小さな丘 。丘には草が生い茂っていました。毎日毎日見るうちに、ある映画の構想が生まれました。

田の稲が実るころになると、それをついばみに鳥が飛来します。私の住んでいる地域では、鳥を追い払うために、ガスを利用した破裂音を「どん!」と響かせたりします。近くで聞くと、鼓膜が破れそうになる大きな音です。 もしその音を人がすることになったら。田んぼの真ん中にある丘にて、日々「どん!」と叫び、鳥追いをする男がいたら。なんとも荒唐無稽な話ですが、そんな男を軸に一本の映画を作ることにしました。

この映画は風景より物語が発想されています。普通の映画は、最初に脚本があり、それにそぐう場所を探します。いわゆるロケハンです。この作品は 逆なんです。あくまでも先に風景ありき。先ほどお話しした田んぼの真ん中にある丘もしかりです。

他にも京都の「高の原」という土地に、住宅街の予定地がありました。広大な土地が造成されて、何もない空間でした。電信柱だけが立てられていました。まだ電線は張られてなく、コンクリートの柱だけが、ぽつり、ぽつりと立ち並んでいました。とても現実とは思えない風景。その場所に惹かれ、何度も足を運び、映画に登場するひとつのエピソードを想像したんです。