WORKS

1996大阪鯨伝説

STORY

薄暗い陶器工房。チンピラの建一が相棒と共に座り込んでいる。彼らに囲まれているのは陶芸家の村山。この部屋の主である。建一が村山に問い詰めているのは、今は亡き信堂東至について。村山の師匠である信堂は日本を代表する陶芸家であった。信堂は失敗作とみなした作品を割らずに隠していたとされていた。その場所はどこなのか?一番弟子の村山なら知っているはず。建一の激しい追及についに村山は口を割ってしまう。信堂の陶器の隠し場所。それは山中にある沼の底であった。建一は一獲千金を求めて山に踏み入るのだが。それは二度と帰ってこれない旅のはじまりであった。

16ミリフィルムのモノクロ映像が死に向かう男を描写。前衛ジャズを思わせる高相岳生の音楽が切迫感をあおる。

Osaka kujira densetsu
In a poorly lighted atelier of pottery, a hooligan, Kenichi sits on the ground with his partner. A man who is surrounded by them is Murayama, who is a potter and a master of this pottery. Kenichi demands information of the late Toji Shindo from Murayama. Shindo was the master of Murayama and a leading potter in Japan. It is said that Shindo did not break his failures but hid them somewhere. Where is the place? Murayama, who is the disciple closest to Shindo, should know where it is. Kenichi presses for an answer, and finally Murayama confesses the secret place of Shindo’s works. It is the bottom of a swamp in a mountain. Kenichi steps into the mountain for making a fortune, but this would be the start of the journey that he could never come back. Monochrome pictures of 16 mm film describe the man who approaches to the death. Music by Takeo Takaso suggesting avantgarde jazz stirs the tense mood of the story.

16ミリ / 4:3 / 25 minutes

STAFF

製作 /
乕松哲司
脚本・編集 /
横田丈実
撮影 /
渡辺信一
音楽 /
高相岳生
出演 /
小谷太志・扇谷泰伸・福井憲吾・中野隆広・長井良暢

DIRECTOR'S NOTE DIRECTOR'S NOTE

大学時代より「千日前セントラル」という映画館でアルバイトをしていました。場所は千日前道具屋筋の真ん中あたり。今はもう閉館したのですが。そこで乕松哲司さんという方と知り合いになりました。とても映画愛の強い方でした。いつか映画製作にたずさわりたいと夢を持っておられて。何度となくお酒を飲みかわすうちに、一緒に映画を作ろうということになりました。乕松さんが資金援助を申し出て下さったんです。

2人で構想を練ることに。お互いに黒澤明のファンだったので、「酔いどれ天使」みたいなチンピラを主人公に。「羅生門」のような森を舞台に。夢はどんどん膨らみました。 8ミリフィルムではなく16ミリフィルムを使用することになりました。その分予算が膨らみましたが。

さすがに黒澤明とは行きませんでしたが、2人で語った構想をもとに撮影に入りました。

主役は劇団「遊劇体」の小谷太志さんにお願いしました。当時の「遊劇体」は野外劇を中心に公演されていたので、役者陣もタフというか、そぎ落とされた感じの方が多かったんです。森の中を走り回る小谷さんはほれぼれするほど美しかったですね。破滅に向かっていく男を見事に演じてくれました。

実は撮影終盤で乕松さんとは意見の相違が出て決裂。完成作品を観て頂けてないんです。映画製作にはよくあることですが、寂しいことです。