WORKS

2021 三塔周景

STORY

「三塔周景」の「三塔」とは斑鳩町にある3つの仏塔、法隆寺五重塔、法輪寺三重塔、法起寺三重塔のこと。「周景」は辞書にない言葉、横田監督の造語。「三塔」の周りという意味と、季節の周(めぐ)りを表す。今回撮影スタッフは「三塔」の「周景」に密着。膨大な記録を12分の作品に凝縮させた。
映画は真夏より始まる。壮麗な伽藍にかかる入道雲。田んぼでは青々と稲が茂る。秋になり神輿が路地を練り歩く。響き渡る太鼓の音。黄金色の稲が収穫されてゆく。冬となり雪が降る、しんしんと。屋根瓦が白く染まってゆく。そして春。川辺の桜並木に人々が集う。門前の老木も花をつけた。暖かい日差しが降りそそぐ。やがて再び田植えが始まって―。
斑鳩の風景が綴る映像詩、そこにあるのは古より変わらぬ暮らしの光景、命の営みだ。

Santo shukei
"Santo" from "Santo shukei" represents the 3 pagodas in Ikaruga: the five-storied pagoda at Horyuji, and the three-storied pagodas at Horinji and Hokkiji. The word, "shukei," which was coined by Director Yokota, stands for "the 3 pagoda's surroundings" and "the round of the seasons." For making this film, staffs have covered "shukei" of "santo" closely. This 12 minute-work was created by condensing a huge amount of those records.
The film begins with the scene of the midsummer.There is a towering thundercloud over the glorious temple. Lush rice plants are growing in the paddy.In autumn, people carrying Mikoshi (a portable shrine) parade in alleys. The sound of drums peals.Farmers harvest golden rice plants.In winter, snow is falling heavily.It gradually turns the tiled roofs into white.Then, spring comes.People gather under a row of cherry trees along the river.The old tree in front of the temple gate is also blooming.Such a warm sunlight streams. And people set out rice plants again...
This is a movie of the scenery in Ikaruga, which shows their traditional way of living and life.

STAFF

撮影 /
横山健二
音楽 /
島田篤
ピアノ /
島田篤
バイオリン /
西村泳子・稲冨友有子
ビオラ /
小間久子
チェロ /
大橋友子
ギター /
清野拓巳
レコーディング /
沢村光(MAGIC BUS RECORDING STUDIO)
編集 /
横山健二・横田丈実
宣伝美術 /
サトリデザイン
題字 /
横田敬子
協力 /
斑鳩文化協議会・東里太鼓保存委員会・齋藤大伸・若山祐美
監督 /
横田丈実

GRAPHICS

  • フライヤー

  • フライヤー

DIRECTOR'S NOTE DIRECTOR'S NOTE

「三塔周景」はドキュメンタリーというより映像詩に近い作品です。

撮影は横山健二くん。前作「遺影、夏空に近く」に続いてとなりますが、実際撮影をしたのはこちらのほうが先なんです。平成22年にスタートしました。撮影に際してふたりで話し合ったのは「自然な目線」を大切にしようということ。仰々しい構図は避けるようにしました。結局季節をふた巡りすることになりました。

膨大な素材が残りました。さてそれをどう編集するか。結局作業に取り掛かったのが7年後。斑鳩町のイベントで上映することになったのがきっかけでした。その時「三塔」を軸にする編集プランを思いつきました。

作品は夏よりはじまり秋から冬へ。春のパートでひとまず幕を閉じます。その後に夏の予感を少しだけ追加しました。季節の巡りを感じてほしかったんです。

音楽は島田篤さん。ピアノ、アコースティックギター、チェロ、ビオラ、バイオリンの楽器編成。季節によって変わる楽曲。「三塔周景」は「ストーリー」の無い作品です。ただし四季を通しての「物語」はあります。今回島田さんの音楽が「物語」を大きく膨らませてくださいました。

昨年よりコロナ禍が世界を覆っています。盤石と思われていたものが次々と崩れてしまって。どうしても神経症的になりがちです。この作品の作業にかかわれたことが私にとって救いとなりました。