WORKS

2002なみださん

STORY

山あいの村にある古い屋敷。日本庭園に夏の光が差す。座敷ではこの屋敷の主人である日本画家が息を引き取ろうとしていた。孫娘である奈央は真っ先に駆けつけて、祖父の容体を見守り続けていた。奈央は姉の紀子に電話をする。紀子は精神を病む亭主の面倒を見ているため祖父のもとに駆けつけることが出来ないでいた。紀子は奈央にお願いをする。「もしおじいちゃんが亡くなる時、携帯電話で、その場の空気だけ聞かせてほしい」と。やがて日も傾きだして、祖父は最後の時を迎える。約束通り奈央は「死」の気配を紀子に電話で伝える。耳をすます紀子。そんな紀子の前に祖父が姿を見せて。

2つの庭で綴られる生と死の物語。デジタル映像が映し出す夏の光が美しい。

Namida san
There is an old house in a village among the mountains. The sun in summer is shining on the traditional Japanese garden. A Japanese-style painter, who is the owner of this house, is dying in a room. His granddaughter, Nao, hastens to the house and stays by his side. Nao calls to her sister, Noriko. Noriko cannot run to her grandfather’s house for caring her husband who is mentally ill. Noriko says to Nao, “when our grandfather will be dying, could you hear me the sound and the atmosphere of your place on the cellphone?” The sun is sinking, and the moment comes. Nao makes Noriko hear the “death” on the phone as she promised. Noriko hears it carefully. In front of her, their grandfather appears... This is the story of life and death in 2 gardens. The sun light in summer reflected in digital images is beautiful.

DV / 4:3 / 53 minutes

STAFF

プロデューサー /
中室新治
脚本・編集 /
横田丈実
撮影 /
長尾優
照明 /
竹中哲也
音楽 /
宮村群時
出演 /
松本喜美子・村井千恵・内藤和也・前畑陽平・村上恵津・鳥居敏明・柳生小五郎

DIRECTOR'S NOTE DIRECTOR'S NOTE

JR奈良駅の近くに「浮遊代理店」というカフェがありました。階段状の客席やら、とても斬新な内装。アーティストの奥田エイメイさんがオーナーでした。そこの中庭が素敵だったので、いつか撮影に使いたいなと思っていました。 もうひとつ気になる庭が。吉野郡川上村の邸宅に日本庭園がありまして。山を借景にした素晴らしいものでした。

2つの庭を舞台にした映画を撮ることにしたんです。

はじめてのデジタル撮影。カメラは長尾優さんにお任せしました。この作品から私が自分でカメラを回すことはなくなります。

季節は夏。庭が舞台なので太陽光線が重要になってきます。ギラギラとした光線ではなく、登場人物に優しく寄り添う感じをねらいました。自然光だけではなく、「HMI」という太陽光線に近い照明機材も使っています。

ひとつ大きな誤算だったのは、川上村が思っていた以上に遠いこと。そして雨の多いことでした。朝は晴れていたのに、何時間もかけてロケ地に着いたら、雨が降り出して。 結局何度も通うことになりました。

主役は内藤和也くん。私の大学の後輩なのですが、今も東映の役者として活躍しています。この作品ではセリフの無い役をとことん追求してくれました。