WORKS

2003火のように

STORY

奈良県斑鳩町。お寺の隣に丸太を利用したテントが建つ。ひと月前にテント内で映画の上映会が催された。上映会を企画したのは花岡由紀。隣にあるお寺の娘であり、今は東京にて映像作家として活動している。上映されたのは過去に村で撮影された記録映画。観客となったのは現在も村で暮らす人々だった。
上映は終わり今はテントを解体するばかり。しかし由紀は東京に帰ろうとはせず、実家であるお寺に身を寄せていた。由紀は夫との間に子供を授かっていて、夫婦間の問題により出産の踏ん切りがつかずにいたのだ。

お寺では由紀の兄である史郎が住職を務めている。史郎は若くして妻を亡くしてひとり暮らし。「早う東京に戻らんと」史郎は由紀を促すが、ふたりの時間を慈しんでいるようにも見える。 そこに東京より由紀の夫である悟がやってきて。

由紀を巡るドラマと、テントでの上映会を記録したドキュメンタリーが交錯。仏教的な時間が現出する。

Hi no youni
Here is Ikaruga in Nara. A tent is built with logs beside a temple, in which a movie was shown a month ago. It was projected by Yuki Hanaoka who is a daughter from the temple and working as an image creator in Tokyo. The movie shown in the tent is a documentary filmed in the village before. People living in the village were the audience of the show. The show ends and there is nothing for the tent but to be taken down. However, Yuki is not likely to go back to Tokyo, but to stay at the temple, her parents’ house. Yuki is pregnant, but she cannot decide to have a baby for a problem between herself and her husband. Her brother, Shiro is a priest of the temple. His wife passed away when they were still young, and he has lived alone. “You should be back to Tokyo soon,” he suggests her to go home, while it seems that he treasures the time with his sister. Then Satoru, Yuki’s husband, comes to visit the temple from Tokyo... In this film, Yuki’s story and the documentary movie shown at the tent are interwoven, and the Buddhist time is emerged.

16ミリ / 4:3 / 90 minutes

STAFF

脚本 /
横田丈実
撮影 /
清水洋策
照明 /
岸田和也
録音 /
大星慶佑
美術 /
江崎武志
編集 /
藤沢和貴・横田丈実
スチール /
川島大伸
音楽 /
サキタハヂメ
制作 /
辻井一人
題字 /
松本碩之
宣伝美術 /
東學
出演 /
早川友子・杉山寿弥・亀岡寿行・中谷暦・前畑陽平・坂口修一・流死児 松本じろ・内藤和也・空田浩志・安多知久

GRAPHICS

  • フライヤー

  • フライヤー

DIRECTOR'S NOTE DIRECTOR'S NOTE

はじめて全面的にプロのスタッフと組んだ作品です。16ミリフィルムによる撮影です。1週間合宿をして撮影に挑みました。結局追加撮影が長引くことになるんですけど。

私のお寺の隣に、丸太を組み、テントを張り、セットを作ることになりました。江崎武志くんがデザインと建築を担当。劇団「維新派」のメンバーが助っ人として参加。さすが妥協がありませんでしたね。真冬なのに寝袋で泊まり込まれて。近くの林で野グソをされていたのにはビックリしましたが。結果としてこちらの想像をはるかに超える美術が出来上がりました。

制作を担当してくださったのが辻井一人さん。大学の先輩だったのですが、卒業後は助監督としてプロの現場を踏まれていました。たまたま「火のように」の撮影時に帰省されていて、全面的に手を貸してくださいました。混乱する現場を本当によくまとめてくださいました。2017年にお亡くなりになったんです。肝臓がんでした。ホスピスで話した時も本当にこの映画を愛してくださっていまして。

この作品は役者が演じるドラマのパートと、ドキュメンタリーのパートに分かれています。両者が交互に錯綜していく構成なんです。

ドラマのパートは、早川友子さんと杉山寿弥さんが演じる兄妹の物語です。 ドキュメンタリーのパートでは、私の旧作「極楽寺燃えた」の上映会を撮影しました。観客は近くの村人たち。「極楽寺燃えた」には村人たちの知人が多く映っています。すでに亡くなられている方もおられました。村人の皆さんには上映中に自由に思ったことを喋ってもらうことにして。今となっては夢のような時間でした。